レンガとレンガ作業の基本
レンガは、文明発生初期から使用されてきた、唯一の人造の建築材料です。魅力的な外観と高い圧縮強度、耐久性、優れた耐火・耐水性、熱や音に対する遮蔽能力などの優れた特徴を持つレンガは、建物、土木工事、造園などに使用されてきました。
1.レンガの種類
粘土を焼いて作られた連歌は、その種類、品質、階級などによって分類されます。
通常レンガ
通常のレンガは特別な外観への要求がない、一般的なレンガ作業に使用されます。コモンタイプのレンガを使用した壁は、左官工事を行う必要があります。
化粧張りレンガ
品質が高く、様々な色や表面処理が施されたレンガです。左官工事などによる表面処理を必要としません。
荷重耐性レンガ
荷重耐性レンガは通常レンガ、化粧張りレンガどちらからも作られ、特定の平均荷重に対する耐性を備えたレンガです。階級による圧縮強度は下記の表を参照してください。
階級
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平均圧縮強度
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N/mm2
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P.S.I.
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1
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7.0
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1,000
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2
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14.0
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2,000
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3
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20.5
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3,000
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4
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27.5
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4,000
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5
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34.5
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5,000
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7
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48.5
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7,000
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10
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69.0
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10,000
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15
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103.5
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15,000
|
上記の数値はBritish Standard 3921:1965に基づいています。
土木用レンガ
土木用レンガは非常な高温で焼き上げたレンガです。これらのレンガは密度が高く強靭な半浸透性を持ち、強度や水分吸収における基準に適合します。これらのレンガは主に高い耐荷重能力や防湿性、化学薬品に対する耐性が求められる土木工事に使用されます。
土木工事
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平均圧縮強度(N/mm2)
以上
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平均水分吸収(%)
以下
|
A
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69.0
(10,000psi)
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4.5
|
B
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48.5
(7,000 psi)
|
7.0
|
上記の数値はBritish Standard 3921:1965に基づいています。
防湿段
特に低い水分吸収率を持つレンガは、地上の水の増量などに備えて壁の基礎部分(少なくとも2段)に使用されます。DPC材料などによって生まれる脆弱性から加重に対する危険性が高まることが考えられる自立構造の壁などへ使用すると効果があります。
2.レンガの特徴と役割
レンガは、粘土を高温で焼くことによって作られます。高熱によって焼結作用がおこり、粘土中の分子が溶解して内部で高強度なセラミックとして結合します。こうした結合は非常に安定したものです。こうした構造を持つため、レンガは過酷な気象条件に耐えることが可能であり、また、ほとんどの化学薬品に対して不活性であるという性質を持っているのです。
強度
レンガの持つ高い圧縮強度はよく知られています。圧縮強度を決定するのは、1)使用材料、2)製造過程、そして3)形状とサイズです。脱気され成型機によって作られ、十分な高温で焼かれたレンガは28N/㎜2(4000psi)以上の圧縮強度を得ることができます。これらのレンガはほとんど全ての建築用途に使用することができます。
美的要素
レンガは、粘土を焼いたときの独特で自然な色を持っています。この色は、焼き上げ過程において複雑な化学作用から作り出されます。着色ではないためレンガの色は半永久的に変化することなく、気象条件によって退色することもありません。粘土の組成、焼き上げ温度、窯の状態などによってその色調は様々に変化します。こうした諸条件を注意深く制御することによって、レンガは限りない種類の独特な自然な色合いを持つのです。
レンガは豊かな色調を持つと同時に、様々な風合いを持っています。こうした色調と風合いの組み合わせによって、レンガ独特の時間の経過による外観の移り変わりが生まれます。建物の外壁を維持するためにかかる高額な費用を考えれば、レンガ独特のこうした特徴が建物のデザインに他の材料にはまねのできない利点を与えていると言っていいでしょう。
気孔率
気孔率はレンガの大きな特徴です。鋳造され、前もって成型された建築材料と比較して、レンガの持つ気孔は毛細血管のようなものだといえるでしょう。毛管効果の長所として、レンガにおける湿気吸収・排出は他の建築材料と比較して10倍も早くなっています。湿気は、日中には排出され、夜間には吸収されています。呼吸プロセスといわれる湿気を吸収・排出するという特徴は毛管効果によってもたらされるレンガが備え特徴であり、室内における温度と湿度のコントロールに一役買っています。こうした特長を持つレンガは熱帯の家屋への仕様などに適しています。また、多くの気孔性材料は化学薬品に対して敏感であり、雨、洪水、大気汚染など気象条件による汚染にも影響を受けやすくなっています。建築材料における気孔性はよく検討すべき事項であり、その能力と用途について注意が必要です。
実験の結果によると、8%の水分吸収率を持つレンガは、20%の水分吸収率を持つ材料に比較して、塩分に対して10倍の耐性があることがわかっています。きちんと焼き上げられたレンガの水分吸収率は通常10%以下であるのと比較して、コンクリートブロックやセメントモルタルでは15%を超えます。こうした違いが、レンガ壁が比較的最小の補修のみで長期間の使用に耐える理由なのです。
気孔性の弊害を和らげると同時にその利点による効果を発揮するためには、石造作業工程における化粧張りレンガの水分吸収率を10%程度に抑えておくことが大切です。
レンガの持つあまり知られていない特性は吸収作用の初期値(IRA)でしょう。吸収作用初期値は、作業中のレンガとモルタルの結合強度について重要な役割を担っているのです。IRAの値が高ければ、モルタルの持つ余分な水分を素早く吸収することができ、セメントによる水分吸収を妨げます。実験の結果によると、IRAを2kg/㎡/分から4kg/㎡/分へ増加させることによって、レンガ結合の強度が50%も増すことがわかりました。一般的には、2kg/㎡/分以上のIRAを持つレンガを使用すると通常のセメントモルタルでは設置が困難となります。脱気能力を備えた新しいタイプのレンガ成型機では低いIRAと高い密度を併せ持ったレンガを生産することが可能となっています。
耐火性
レンガは優れた耐火性を備えています。100㎜のレンガと12.5㎜の通常のモルタルでは、2時間の耐火性があり、200㎜のモルタル抜きのレンガでは耐荷重用途でない場合最大6時間の耐火性があります。レンガは1000度の温度でもかなりの重量を支えることができ、コンクリートが水分不足のため450度までの耐久性しかないことと対照的です。
レンガの持つ不可燃性は、建造物における耐火用途を可能とします。過去には町中を焼き尽くすような大火災があった後、人々は家屋の建築材料にレンガを選んだという例が数多く見られます。最も著名な例としては、1666年のロンドン大火災が挙げられるでしょう。この火災の後、レンガはほとんどの家屋で建築材料に使用されたのです。
防音効果
レンガによる壁は、その密度のため高い防音効果を持っています。レンガの防音効果は200~2000ヘルツの音域で、約12㎝の厚さで45デシベル、約23㎝の厚さで50デシベルの音を遮断することが可能です。
断熱効果
レンガは、通常コンクリートなどの建築材料より優れた断熱効果を持っています。穿孔はレンガの持つ断熱効果を高める働きがあります。また、レンガの密集性と湿度は家屋内の温度を一定に保つことに効果があります。つまり、レンガは熱の吸収と排出をゆっくりと行うため、日中には家屋を涼しく保つことができ、夜間には室内を暖かくすることが可能なのです。
レンガを使用した家屋の省エネルギー性は特筆すべきものです。Brick Institute of
Americaによって実施された実験では、木造家屋と比較してレンガを使用した家屋は30%もの省エネルギーを実現しました。
下記の表では様々な材料についてその熱伝導性を比較しています。
様々な建設材料の通常の熱伝導性
建設材料
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Btu/(sq.ft.?hr?F/in.)
|
W/mK
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砂、砂利集積(乾燥)
|
9.0
|
1.30
|
セメントモルタル
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5.0
|
0.70
|
コンクリート (1:4) |
5.28
|
0.77
|
コンクリートブロック(1:5) (楕円状の抜き部分が4つ) |
5.2
|
0.75
|
コンクリートブロック(1:10) (楕円状の抜き部分が4つ) |
6.6
|
0.95
|
固形レンガ(密度:1925kg/㎥) |
5.0
|
0.72
|
穿孔があるレンガ(全体の25%に穿孔 密度:1400kg/㎥) |
4.0
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0.58
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耐破損性
物質の耐破損性は、粒子の結合によります。レンガの持つ高い耐破損性は高温で焼き上げるときに発生する非常に強いセラミック結合が実現しています。
風化
風化とは水の中に解けた溶解性の物質が運ばれ、定着しレンガ表面に次第に層を成して見苦しい膜を作り出すことを言います。この溶解性の塩分はレンガの原材料に含まれています。しかしほとんどの場合、風化を進める塩分は地面にたまった水、環境汚染、モルタル原料、その他レンガと触れ合う物質などからのものです。
用途に対する柔軟性
レンガは、建築物、土木工事を問わず、広範囲に使用されています。特に、耐荷重を必要とする建造物に使用することが可能であり、建築工程の単純化のほか、建築材料、時間、労働力などを削減することが可能となります。また、レンガは建設作業の必要に応じてその形状やサイズを簡単に変更することができます。レンガは、多くの場面と用途に柔軟かつ手軽に対応することができます。
耐久性
レンガは非常に高い耐久性を持っており、人造の建築材料としてはおそらく最も堅固なものでしょう。各地で多くの石造建造物が何世紀もの時間を経ていまだに健在であることが焼き粘土レンガの耐久性を物語っています。
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